長崎のすずき矯正歯科 副院長の鈴木智貴です。
本日のお題は「矯正治療に痛みは付き物なのか?痛くなくても歯は動くの?」です。
Contents
矯正治療は本当に耐えられない痛みを伴うか?
矯正治療を希望して初診相談に来院される患者さんからよく聞かれるのが痛みについてです。
「とにかく痛い」「痛くて痛くてしかたない」「痛くて眠れない」と聞くけど本当ですか?など聞かれるのですが・・・
結論から言いますと、確かに痛みは個人差がありますが、現在の矯正治療で耐えられない程の痛みを伴うことは通常ありません。
確かに私自身が矯正治療を受けていた40年程前であれば治療初期に耐えられない痛みを伴うことがあったのは事実ですが、現在の日本で矯正専門医が治療を行うのであれば心配いりません。
矯正治療の痛みは大きく分けて2つある
「矯正治療はとにかく痛い」「矯正治療では痛くないと歯が動かない」と思われている方にまず知って頂きたいことがあります。矯正治療で感じる痛み矯正治療による痛みは大きくわけて、歯が動く時に感じる歯の痛みと、矯正装置が口の中の粘膜にあたり粘膜に傷や潰瘍ができることによる痛みにわけられます。この二つは原因が全く違うので緩和するためには全く違うアプローチが必要だということです。ここではそれぞれに対する予防法や対処法を説明していきますが、歯が動く事による痛みはワイヤーなどの進化で大幅に減少していますし、粘膜の痛みも気を付けて治療することでかなり軽減することが可能なので最後まで読んでください。。
歯が動くことによる痛みの原因と対処法
歯が動く時の痛みは食事などで物を咬んだ時に感じます。咬まなければ少し歯が浮いた感じがする程度です。矯正治療を始めると硬い物が食べられなくなるといった体験談を聞いたことがあるでしょう。実際には長期間続くわけではなく、軽減することも可能です。
かなり前に矯正治療を受けた方や外国で治療を受けた方の中には痛みが非常に強くて耐えられなかったという方もいらっしゃると思いますが、これは当時の矯正装置の素材が原因によるもので現在は大きく改善していますので安心して下さい。
歯が動く時に痛みを感じるのはなぜなのか?
矯正治療で歯はどうやって動いているのでしょうか?歯は歯槽骨という骨で支えられています。歯はこの歯槽骨の中を移動しているのですが、移動する方向にある骨が吸収してそのスペースに歯が移動、移動してできたスペースに骨が作られるということを繰り返して動いているのです。まず初めに移動する方向にある骨を吸収してスペースを作ることから始まるわけですが、骨の吸収の初期にプロスタグランジンE2という痛みの原因となる物質がでます。これが、歯が動くときの痛みの原因です。
どのくらいの期間続くのか?
矯正装置を初めて装着した時は歯に力が加わっている感覚はあるものの、痛みは感じないのが通常です(もしこの段階で強い痛みを感じる場合は歯に加わっている力が強すぎるので、担当医に相談して下さい)。痛みの感じ方は個人差が非常に大きいのですが、一般的には矯正治療装着後3時間から6時間くらいで痛みを感じはじめ、ピークは翌日から翌々日です。3日程度するとかなり緩和され、長くても1週間もするとほとんど感じなくなります。
また通常、矯正治療は月に1回程度通院して調整を行いますが、調整の度に3日から1週間程度の痛みを感じます。しかし、初めより2日目、2回目より3回目と徐々に痛みの強さも期間も緩和されます。3か月~半年もすると調整後の痛みもほとんど感じなくなります。
痛みを軽減する方法
矯正治療中の痛みに対して鎮痛剤は効きますか?という質問をよく受けます。結論から言うと効くけど必要ではないといったところで、私は自分の患者さんには極力使用しないように言っています。現在の矯正治療では鎮痛剤を飲むほどの痛みを感じないように治療可能だからです。
歯を動かす時にワイヤーで歯に力を加えて歯を移動するのですが、痛みが強い場合はこのワイヤーの力が強すぎるのです、加える力を弱くすることでかなり緩和することができます。歯に強い力をかけないと歯が動かないのでは?と疑問に思われるかもしれませんが、歯を動かすのに強い力は必要ありません。むしろ、50g~150g程度の弱い力を持続的にかける方が歯の動きが良いことがわかっています。
現在ではニッケルチタンワイヤー等の弱くて持続的な力がかけられる形状記憶合金のワイヤーがありますので、以前のような治療初期の強い痛みを大きく緩和することが可能です。また、特に痛みを感じやすい方には一般的ではないですが、糸のように非常に細いニッケルチタンワイヤーやレスポンドワイヤーのような非常に弱い力をかけるワイヤーもありますので、不安のある方は担当医に相談してみて下さい。
私の個人的見解ですが、副作用もある薬を使用するよりも、まずは歯にかかる力をコントロールして弱くすることですることが第一だと考えています。鎮痛剤はそれでもどうしようもない時などに検討されてはいかがでしょうか?私の経験では服用する必要があった患者さんはほとんどおりません。
矯正装置が口の中の粘膜にあたることによる痛みへの対処方法
矯正装置が口の中の粘膜にあたって痛い場合、原因が3つ考えられます。一つ目は矯正装置が頬の粘膜にあたって痛い。二つ目はワイヤーが粘膜に突き刺さって痛い、最後が矯正装置が舌にあたって痛いです。それぞれの対処法を説明します。
矯正装置が頬の粘膜にあたって痛い場合の対処方法
粘膜にあたって痛いのは硬くて尖っているものが粘膜にあたり粘膜を傷つけることが原因です。ですから硬くて尖っているブラケットなどの矯正装置を軟らかくて尖っていないもので覆えばいいわけです。矯正治療中の痛みに対処するために医療用に開発されたものなどがありますので紹介します。
医療用シリコーン
最も一般的で矯正治療開始時にクリニックで渡されるものです。口の中を乾燥させた後に小さく千切ったシリコンでブラケットを覆って使用します。非常に軟らかく痛みの軽減効果が高いのですが、水分に非常に弱く食事などですぐにとれてしまう難点があります。
医療用ワックス
シリコンに比べてとれてしまう頻度が少ない優れものです。シリコン程一般的ではありませんが、矯正専門医院には置いてあると思います。シリコンはすぐとれるから何度もつけるのが面倒くさいという方は相談されてみて下さい。ただ、シリコンに比べると少し硬いのが難点です。またシリコン程ではありませんが、ある程度時間が経つととれてきてしまいます。
デュラシール
とにかく頻繁にとれるのは勘弁してほしいという方向けです。これは虫歯治療中の仮封剤として主に使用されるのですが、シリコンやワックスと比較して耐久性が非常にいいです。ただし一度つけるとなかなか取れないので、どこにでも使用することができるというわけではありません。ブラケットについているフック(尖っているので特に痛い)やワイヤーの断面に使用します。自分でつけたり外したりはできませんので、担当医に相談されて下さい。
コモンベースレジン
主に矯正治療中の痛みを軽減するために開発された商品です。用法はデュラシールとほぼ同じです。矯正専門医では大抵どちらかを用意していると思います。
ワイヤーが突き刺さって痛い時の対処方法
矯正治療中、歯が動くことでワイヤーが後ろから徐々に出てくることがあります。これは治療初期に歯並びの凸凹を治している時に最も頻繁におきます。僅かに出ている程度でしたら、シリコンやワックスで覆って対処可能です。しかし、ワイヤーが長く出ているようでしたらワイヤーを切るのが一番です。ニッパーなどで自分で切ることも不可能ではありませんが、必ず担当医に連絡して下さい。基本的には急患で診てもらい、クリニックで切ってもらうことになります。切るだけですので5分とかかりません。我慢せずに担当医に連絡して頂くのがベストです。
矯正装置が舌にあたって痛い場合
これは主に舌側矯正装置で治療した場合に起こる痛みです。
舌が矯正装置(ブラケット)にあたり痛むのですが、感覚が鈍い頬の粘膜と違い、舌側矯正のブラケットにあたる舌の辺縁部は非常に感覚が鋭いため人によっては痛みに耐えられず、表側の矯正装置に変えざるを得ないこともあります。
舌側矯正装置も徐々に小さくなり昔ほどの痛みはありませんが、小さくても尖っているため表側の装置に比較すると我慢することが必要になります。昨年、この問題を解決するための角がない舌側ブラケットが開発されました。私はこの装置を使用したことがありませんが、通常の舌側ブラケットに比較すると痛みが少ないと思われます。
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